旅人3
花紅露は不振な男の行動に目を奪われた。
さっきからこちらをちらちら見てくるのだ。
黒髪で思わず触りたくなるような細い髪、体躯は細身で格好からするに神父だ。
黒服の神父?
ふとファンタを見るが、ちょうど男を背にする形になっていて気づいてないようだ。
もしかしたら知り合いかもしれない。
花紅露はファンタに声をかけようと試みたとき。
白い分厚い聖書がファンタの少しとがった髪を潰す。
バッシーン
「いってぇ」
あたりにものすごい音が響き渡った。
「いい度胸だね。僕をおいて君はお茶かい?」
ファンタはまじまじと声の主を見る。
なんてことはない、長年連れあった友人だ。
「ラジアム!お前いきなり殴ることはないだろ」
じろりとファンタがラジアムを睨むが軽く受け流した。
「その人が探してた人」
ラジアムと一緒にいた金髪の男はなだめるようにに問いかけていた。
あの人と顔がだぶる。十中八九あの人で間違いないだろう。
「あっそうです。つい我を忘れてた連れの剣士でファンタです。
ファンタこの人はお世話になる先の」
ラジアムは慌ててファンタに声をかける。
「オパールです。奇遇ですね私も片手剣を使うんですよ。」
酷薄そうな目で笑い、ちらりと剣を見せた。
「よろしく」
ぎこちなくファンタは握手を求めた。
オパールはローブから手を出しそれに答える。
花紅露はただそれを仕方なしにみていた。
「それにしても、すいません」
ラジアムはこちらにいきなり振り向いたかと思うと
神父にふさわしい笑顔で花紅露の方をむいた。
花紅露は大丈夫だという風に軽く笑う。
「いえ、慣れてますから。あのラジアムさんファンタさんを誘ったの私なんです。
それまでずっと待っていらしたんですけど私が」
「いいんですよ。ファンタ、ホントに待ってたのかごめん殴って」
「いいって宿見つけて来たんだろ」
いまさら何をいうんだというようにラジアムを見た。
「連れはこの人だけですか」
確認するように尋ねたオパールにラジアムは花紅露の方を見て少し思案し始める。
「なぁラジアムこいつ連れて行っちゃだめか?」
考えもなしに呟いたと思いファンタに冷たい視線を送る。
「えっ」
「こいつも人を探してたんだよ。それで一緒に行動しようってさっき約束したばかりなんだ」
すぐ断るのは悪い。そうつづくんだろうね。
「分かった。いいんですかあのえっと」
「花紅露です。」
がたん
音の下方向に目を向けるといすを倒しオパールは目を見開いていた。
「どうかしたんですか」
ラジアムはたずねる。
「花紅露・クロノスか……」
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変なことをいれて自分で追い込んでしまいそうになる。
もちろんそこは自分を抑えてカット。