旅人
「うわぁぁ〜命だけは助けてください」
二十代ぐらいの武器を持った目つきの悪い男達に囲まれ、大きな悲鳴を上げる老人。
その老人のことを何も知らない者が見たらどう思うだろう?
っとここにいい例がいた。
「ハァーーア!」
というかけ声とともに後ろから黒服の男が飛び込んできた。
身体は細身でとても喧嘩が出来そうにない青年を見て老人はしまったと眉をしかめた。
青年は明らかに護身用と思われる細身の剣を思いっきり振り落とした。
男たちはぎょっとして慌てて離れた。
そしてゆっくりと青年の方を見るとげひた笑みを浮かべていた。
「神父様があぶねぇことするじゃないか」
多勢に無勢といった様子である。
青年は後ろに老人をかばい男たちとにらみ合っていた。
しばらくの間それが続いたが埒が明かないとおもったのか男たちは青年に襲い掛かった。
この細身の剣で青年がどこまでもつか老人は考えていた。
男たちの剣はとても大きく青年の持っている剣が折られてしまうと心配してしまうほどだった。
そう長いこともつものではないな。
老人は心の中でそう判断をくだした。
だが青年は剣をしっかりと持ち直すと熟練の剣士のように素早く切り裂いていく。
血は地面を彩り、青年の服につくがもとより血より濃い色のため目立つことはなかった。
目つきの悪い男達は案外ひ弱なもので、5分とたたないうちに駆け足で逃げていった。
「ありがとう御座います」
声の若さとは裏腹に見事な太刀筋に魅せられた老人はお礼をいった。
老人は目線を下にやり、初めて相手の服装を見て驚いた。
黒い服に黒い十字架。
この時代の神父は黒服なのは一般的であった。
しかし、その服に埋もれるようにしてかけられてある鈍く光る黒い十字架は異様だ。
「御礼をしたいんじゃが」
老人は視線を下にずらしたまま頭をかくようにした。
観察していたと知られたらそれはそれで場が悪くなると思ったからだ。
「いえ、いいですよ。それよりこの近くに宿ありませんか?」
宿…確か隣の村にあったな。
まさかもう日が暮れるというのにそこを紹介するわけには行かない。
他の者ならいざ知らず、この青年が隣町までにある森を抜けるのは困難に思えたからだ。
あそこはよっぽどの物好きぐらいしか行かない。
「んん〜。もしよろしかったら来ませんか?汚いところの上、むさ苦しいですけど」
と遠慮がちに勧めた。
きっと黒い十字架のせいだろうと青年は思っていた。
自分でもこの格好は十分人目を引くことは分かりきっている。
多少損はするが変える気はまったくない。
「いいんですか?連れがいますけど」
黒い十字架を持つ青年はうつろ笑いながらいう。老人は、それを察したようで。
「ええ。正、お気つけてください。いつ、誰が、襲ってくるか、分かりませんから」
老人は少し含み笑いをしながら言った。ドアを開けるとラジアムを先に家に入れた。
「ふぅ・・・ひっ・・・」
カーシックの家について安心した途端、ラジアムは目を丸くする羽目になった。
何せ、金髪の美少年がこちらをギラリと睨みつけ、
剣の刃をラジアムの首筋に押し当ててきたからである。
それなのにカーシックは、
「オパール。お客さんじゃよ」
冷静な顔で、言ってのけた。
「すいません。賊かと思いましたので。ところで、どういう知り合いですか」
と淡々と喋る。ラジアムは警戒されていると感じた。
「さっき助けられてな」
カーシックは、言ったが
「へぇ。それで、ストレス解消をする、あなたが」
と厳しい目をオパールがはなつ。
「すっストレス解消?」
ラジアムはきょとんとしてカーシックをみた。
老人の手はしわくちゃで手に豆がたくさん……ってわけではない
武器を握ってるような手じゃないが
「カーシックは拳法家ですよ。」
オパールは緑色の目を細めて笑った。
この暑い中彼の白さはひときわ目立つ、ローブから覗く輝かしい金髪
細い腕ただ、見た目で判断していけないことは先ほど身をもって知った。
ふとオパールと目が合ってしまった。
「どうしたんです?」
まさか本当のことを言うわけには行かないラジアムは困ったというように軽く微笑む。
「おっそういえば、おぬしの連れはどうしたんじゃ?」
うっかり忘れてた、怒られるよなあんな太陽の下で待たせてるんだから。
「迎えにいってきます」
ラジアムは億劫な気持ちで一度置いた荷物を持ち上げる。
「私も行きますよ、暇ですし」
にっこりと微笑まれて少し困惑する。できれば一人で行きたいんだけど。
「おおすまんな。オパール」
カーシックさんも乗り気だ否定はできそうになかった。
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主人公がでていない。
そして物語は原稿のでは古すぎて見るに耐えなくなりさらに予定の方向より変わるかも。
それよりのりがいいときと悪いときの小説のあらが自分で見てもいやになる。