森にそびえ立つ魔術師の塔3
うらやましいと思った。
さんさんと輝く太陽の光を浴びる向日葵みたいなテッドが。
ちゃんと意志をもちそれすら実行してしまうんじゃないかと言う君の全てが。
僕にはないもの、僕にかけているもの。
それを持っている人が目の前にいる。
だから忠告してあげよう。
余計なお世話かもしれないけど、テッド君が気に入ったから。
僕に未来を見せてくれるから。
「気をつけて、動いたよ星が」
テッドは少し目を見開いてはにかむように笑った。
「あぁ」
想ったように伝わらなくて少し落ち込んだ。
いいや。僕のおせっかいなんだし。
「悪いけど、円になって手をつないでくれませんか」
ルックは気持ちを入れ替えてファオたちに呼びかけた。
これから一仕事だ。
「何をするつもりですか」
過保護なパパがやはり意気込んで聞いてくる。
「送ってあげるだけです。歩いて戻るのは疲れるでしょう。
でも転送って高度な技だから言うとおりにして欲しいんだけど」
もっともらしい嘘をついて言いくるめる。
実際は凄く簡単だ。
ただ思い浮かべて魔力を込めるだけ。
本来ならそれだけだけど、今回は意外と大掛かりだ。
ゆっくりと息を吐いて呼吸を整える。
「しっかりつないでてくださいね」
釘を刺すようにファオたちに言った。
テッドはそのときものすごく焦っていた、何をやらせる気だ。
転送にこんなに集中する必要はない。
「緊張するね。テッド」
ファオは握った腕にキュッと力を込めた。
「あぁ」
ものすごく怖い。
あの子どもは何を仕掛けてくれるのか。
「えいっ」
とうとうルックの魔法が発動した。
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なんでか気分はいい。
それにしてもルック気を抜くと幼さが消えてしまう。