夢箱 サードニクス

 

木がさらさらと風にあおられ囁きあう。
私を照らす太陽がとても暖かくて眠りを誘う。
「アイノ!こんなところにいたんですか。探しましたのに」
私は聞きなれた人の声を聞くとゆっくりと目をあけた。
あっやっぱりシャロだ。正式にはシャロライナっていうんだけどね。
彼女はっとても優しくていつもふんわりした香りをさせる。
返事の変わりに微笑むとシャロは困ったような顔をした。
「アイノ、それもしかしてサードニクス?」
シャロは私の近くまで寄ると少しかがんで胸元のサードニクスを見た。
「そうだよ。カメオにしたんだけど変かな?」
「変じゃないですわ。とっても似合っていらっしゃいます」
少し笑いを含んでシャロは言った。
「シャロ似合わないなら言ってよ」
私は友人のからかう様な仕草に少しふくれた。
「いえ。大丈夫ですわ。黒く艶やかな長髪の人が花を抱えて眠っているデザインでしょう。
この方は青い目をお持ちになって男性の方なのですねと思っただけです」
シャロはいたずらっぽくウィンクした。
「シャロの意地悪。もしかしてユーフテスに似てきたの?」
私は自分がモチーフにされたのに気づかれたと思って顔を紅くしてしまった。
「そんなお顔をなさるからいけないんですわ。
アイノ知っていますか?サードニクスの意味」
「知らないけど?」
「魔術や妖術から身を護り、身に付ける事で知恵を増やし、
恐怖心をなくして勝利と幸福を導くとされていますわ」
「そんな意味があったんだ。大切にしなきゃね」
「そろそろ行きましょ。
ユーフテスが痺れを切らしているかもしれません」
(今では愛を象徴するんですが
どちらにしても似合ってますわ。)
「テスは痺れを切らす前に来るから大丈夫だよ」
テスの性格を思い出し笑う。
が、ふと戦場のことを思い出してしまった。
力を失い倒れる巫女たち・・・死ぬ間際に残される言葉。
「アイノどうしたの?」
「なんでもない」
こんな日がずっと続いていたらあんな苦しい思いしなくてすむのに。

 
小説

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